猫背を直したい

恥ずかしい

旅荘 和歌水【吉祥寺】

渋谷Bunkamuraで催されているピーターラビット展でピータロー兎の世界を堪能した後、松濤地区の豪邸を見物しつつ「ラブホとこんなにも近い場所にこんなハイソな世界があるなんて田んぼの真ん中にラブホがそびえ立っている田舎ではあり得ないことだ」と感嘆して、さて、お次はどこに行こう、となった時に、先日上司に吉祥寺という街の面白さを語ってもらえたことを思い出し、それから私は前々から行きたいと思っていた「旅荘和歌水」を真っ先に連想した。
思い立ったが吉日ということで、渋の谷を越えて大ターミナル駅から路面電車の停留場同士ほどの距離も離れていない神泉という駅にて京王の電車に乗りこみいざ吉祥寺へ。

初めて来る休日の吉祥寺にはファミリーやアベックやフレンズ達が溢れかえっており、私はGoogleマップ片手に井の頭公園のすぐ隣に立地している旅荘和歌水を目指す。

公園の中を通り抜け、旅荘和歌水に到着した時間はまだ15時前。
和歌水は公園に向かう小道にオシャンティストアー等と並んで立地しているため、駅の方からはどんどんファミリーがやってくる。
まずは建物を観察する。和歌水の建物の隣には駐車場、そこから入れる勝手口もあるようだ。

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年を重ねるにつれどんどん減少しているものの、まだわずかに残っている羞恥心から一度和歌水の前を通り過ぎ、人の流れが僅かに途絶えたタイミングを見計らって、周囲と比較し遥かに異質なオーラを放つその建物の表玄関にエイヤと飛び込んだ。



連れ込み旅荘の玄関に入るとセンサーでベルが鳴り、カウンターの奥の控え室から「ハーイ、少々お待ちください」と優しそうなオバチャン声が聞こえた。
入口は一見普通の寂れた古い旅館のような出で立ちだが、奥から出てきた優しそうなオバチャンは「ただいま8時までサービスタイムですからね、8時までごゆっくりしていって下さい」と私に告げる。
玄関に並べられたスリッパに履き替えるとオバチャンはささっと下駄箱に靴を片付ける。下駄箱には先客のものであろう、若者が履いていそうなコンバースやサンダルが並んでいた。

「3階のお部屋しか空いてないですけどね、8時までよろしいですからね、ちょっと階段を上らないといけないんですけどね」
とオバチャンは話しながら上に案内してくれる。
一段一段が少し高めの古い階段の途中に備え付けられた棚には、雉の剥製や古そうな茶器が雑然と飾ってあり何故かライトアップがされていた。
何回か角を曲がり方向感覚を失いながら私とオバチャンはtalkする。
「どういう年齢層のお客さんが来るんですか」
「若い方からご高齢の方まで、様々ですよ」
この建物は50年前に建てられて、その頃の大きな建物は頑丈に作られているお陰で311の地震でも平気だったこと、裏にもラブホテルがあったが潰れて今はマンションが建っていること、料金が先払いなのは払い忘れて出ていってしまう人がいるから…等々
「ずっと前から来たいと思っていた」とオバチャンに伝えるとオバチャンは大層喜んでくれた。



部屋に入ってオバチャンに料金の五千円を渡す。
「扉を開けると下でブザーが鳴ってお帰りになることが分かるんですけどね、色々あるといけないから先にいただくようにしてるんですよ。」
オバチャンは少し申し訳なさそうにお金を受け取り、部屋の鍵は必ず閉めるようにと私に念を押した後、「どうぞごゆっくり」と仲居さんのような挨拶と共に退散していった。




私は早速部屋をカメラでパシャパシャしまくった。

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この金ぴかの扉を開けると窓があり、その向こうは井の頭公園のお散歩ロードである。
いぬの散歩をしながらポケモンゴーをしている人が見えた。



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ラブホテル経験が年齢に伴っていない私が持つ知識の1つに、ラブホにはコンドームが複数個置いてある、というものがある。和歌水にはいかにもヤりベッドのサイドテーブルですという感じの小さな机に、「003」と書かれたコンドームが1つしか準備されていなかった。枯れかけた高齢のアベックが多そうな連れ込み宿だから1つしか置いていないのだろうか。
かつて大学の後輩(男)は、ラブホで彼女と4回はすると言っていたような気がするが、果たしてそのような場合には頼めばもう少し持ってきてくれるのだろうか。ラブホテル経験が年齢に伴っていない私には分からない。
コンドームの隣には灰皿が置かれており、インフォメーションにあるように「ご注意」しながら寝タバコをするか、情事の後に男がタバコをスゥー、プハァーとやった後に一言、「帰れよ」と言うためのものに違いないと私は確信した。
もう新しいあらゆるホテルでは大抵寝タバコ厳禁なので、貴重な昭和の遺産である。


冷蔵庫には十六茶三ツ矢サイダーの缶がサービスで置かれていた。
湯船に浸かりながら飲もう。


一通り写真を撮り終わった私はとりあえず部屋から回せるポケスポット「ケヤキ」でアイテムをゲットし、和歌水の名前入りの、普通の旅館にあるような持って帰っていいハンドタオルを忘れないように記念に鞄にしまいこみゲットし、お風呂にお湯をはった。



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洗面台の横のトイレにはドアがあらず、洗面所の入り口のアーチ型のドアにも鍵があらず、きっとここにはそういう関係の男女しか来ないと分かってはいるものの、ラブホテル経験が年齢に伴っていない私はラブホテルのそういうところに日々憤りを感じている。


やっとお風呂にお湯がたまり、体をゴシゴシと洗う。
湯舟の壁面の上の方には小さな穴が空いていて、お湯がピューと細く漏れだしていた。
壁も床も湯舟も全てタイル張りで、プラなんとかでできたお風呂を日々使っている私にとってはタイルの並び一つ一つが美しい。きっと割れて剥がれ落ち、同じ模様のタイルが見つからなかったのであろう部分の修繕跡も、直した人の遊び心が見てとれる。
浴室の小さな窓からは、昔あったラブホの跡に建ったとオバチャンに教えてもらったマンションが見える。ベランダに子供の三輪車。きっとこの新しいマンションの住人は、一刻も早く和歌水に潰れてもらいたいと感じている人もいるのだろうなんて考えながら、サービスの十六茶を啜る。






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ベッドに寝転んで天井を見上げると綺麗な電灯の装飾と、そこにはったクモノスが。
メインで使うスペースはきちんと掃除されているものの、隅っこにはホコリがたまってクモノスが張っている。この部屋の3ヶ所でクモノスを見つけた。
予習のために和歌水をググろうとすると検索欄に「幽霊」なんて検索予測が出てきたので、とりあえずお札が無いか確認したでかい額縁の裏にもスゴいホコリがたまっていた。
潔癖症だとか虫嫌いの女は発狂して、連れ込み男を罵倒するんだろうなあ、なんて、かつて小学校の帰り道、拾った木の枝に発見した全てのクモノスを巻き付けて採取しわたあめを作れないかチャレンジしていた私は心配してしまう。そもそもそんな女は昭和の連れ込み宿には入らない。


そんなこんなで連れ込み旅荘を堪能し、部屋を出た。階段で最初に案内してくれたオバチャンが布団を運んでいるところに遭遇。
「ご利用ありがとうございました。お帰りはこちらですよ」と通路を開けて丁寧に応対してくれる。
1階の玄関まで辿り着くと、既に履いていた靴がたたきに並べられており、てっきりそのまま誰とも会わずに出るシステムなのかと思いきや、気配を察知した別のオバチャンが出てきてこれまた丁寧に見送ってくれた。

ファミリー達に、連れ込み旅荘から出てきた一瞬を見られるのがとても恥ずかしいので、小太りの私は可能な限りのスピーディーさで旅荘から道に出る。
日はほぼ暮れていた。オバチャンが詰めている和室の部屋の窓が空いていて、そこに置いてあるテレビには夕方のニュースが映っていた。
オバチャンも優しいしお部屋も私にとってはとても素敵なこの旅荘を、またいつか「ご利用」したいと思った。